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ね、君が行きたいところへ行こうよ

ね、君が行きたいところへ行こうよ

***五つの花***

遠い昔・・・
宇宙にまた一つ、六つ目の星が生まれた日。
五つの星たちは、それぞれの星から一つづつの花を持ち寄り
お祝いしました。

星の真ん中に植えられた五つの花はきらきらと輝き、
その光で星の半分はいつも昼間の明るさを保ちました。

時は流れ、星には海が生まれました。
新しい命を見守るように、
五つの花は海の底に身を沈めました。

その輝きは、海の底にあっても何一つ変わることはありません。

しかし深い海の底。
地上に存在する全てから、姿を隠すこととなったのです。




星は暗闇に閉ざされ、見かねた太陽は言いました。

「闇を作らぬ明るさこそ美しい。

あの花たちは海の底に沈み、暗闇の中で何をするというのだろう。

星よ、私の周りを回るがよい。」



対極にある月は言いました。

「闇と共存する光は全てを癒す柔らかな光。

 花たちよ、海の底をお願いしますよ。」



星が周り、光と闇が繰り返され、幾つもの命が生まれました。





やがて海が陸となり、陸が海となり、
ある夜花たちは、再び地上のものとなりました。

「私たちは、これからどうしたらいいのかしら。」

「闇を消し去る光を、もう私たちに期待するものはいない。」

「太陽は私たちを、必要のない存在とののしるかしら。」

「いや、ボクたちだって好き好んで海の底に行った訳じゃない。
変わっていくことは、仕方のないことさ。」

「そうだね。
今、星が周り始めた。
僕らは今できることを探せばいいじゃないか。
今存在する意味を見つければいいじゃないか。

時が流れても、たとえ誰もわかってくれなくても。」



静かに見つめていた月が語りかけました。

「あなたたちは海を愛してくれました。

闇に生まれ、闇にしか生きられない魚たちと寄り添い、ともに生きてくれました。

言葉は伝わらなくても、闇を光に変えることが出来なくてもいいのです。

あなたたちがそこにいてくれるだけで、その一瞬そばにいたことが彼らの安らぎになったのだから。

明日は流れにさまよい、例え再び会えなくても。

時に流されない永遠を、あなたたちは海の底にもたらしてきたのです。」



月灯りの下、花たちの涙の滴がキラキラ光りました。



これからどこでどう生きていくか、全ては未知の未来です。


でも、共に生きようと離れて生きようと、
彼らの輝きは変わらないでしょう。



生きる誇りを失わない限り、永遠に・・・。



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